- 1. 相続のルールと要点
- 2. 相続とは
- 2.1. 相続とは、人の遺産を次の世代に受け継がせること
- 2.2. 相続がうまくいかないと、大きなトラブルが起こる
- 3. 相続前に押さえておきたい4つのポイントとは?
- 3.1. 相続財産はなに?
- 3.2. 誰が受け継ぐの?
- 3.3. 分配の割合はどうするのか?
- 3.4. 相続税を払えるか?
- 4. 相続の対象となる財産
- 4.1. プラスの遺産
- 4.2. 相続財産の評価時期は?
- 4.3. 不動産の評価方法も問題になる
- 4.4. マイナスの負債
- 4.5. 権利義務
- 5. 相続の対象にならない財産
- 5.1. 祭祀財産
- 5.2. 祭祀財産は祭祀主宰者が承継する
- 5.3. 家庭裁判所で祭祀継承者を決めてもらう方法
- 5.4. 生命保険金
- 5.5. 一身専属的な権利
- 6. 相続財産を確定する方法
- 6.1. 相続財産調査
- 6.1.1. まずは被相続人の自宅を調べる
- 6.1.2. 郵便物をチェックする
- 6.1.3. 不動産の名寄せ帳の開示を受ける
- 6.1.4. ネット取引にも注意
- 7. 借金を相続したくない場合
- 7.1. 相続放棄とは
- 7.2. 限定承認とは
- 7.3. 相続放棄・限定承認の方法
- 7.4. 相続放棄・限定承認の期限
- 8. 誰が遺産をもらうのか
- 8.1. 法定相続人
- 8.1.1. 夫や妻はいつでも法定相続人
- 8.1.2. 第1順位の相続人は子供
- 8.1.3. 第2順位の相続人は親
- 8.1.4. 第3順位の相続人は兄弟姉妹
- 8.1.5. 相続人がいない場合
- 8.2. 相続人調査とは
- 8.2.1. 相続人調査は手間と負担がかかる
- 8.2.2. 戸籍が連続していることがポイント
- 8.2.3. 専門家に依頼すると楽になる
- 8.3. 遺言で相続人を指定できる
- 8.3.1. 遺留分に注意
- 9. どのくらい遺産をもらうか決める方法
- 9.1. 法定相続分
- 9.1.1. 配偶者のみが相続人になる場合
- 9.1.2. 配偶者と子どもが相続人になる場合
- 9.1.3. 配偶者と親が相続人になる場合
- 9.1.4. 配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合
- 9.2. 遺産の分配を決める方法
- 9.3. 遺産分割協議
- 9.3.1. 遺産分割協議には相続人が全員参加する
- 9.3.2. 遺産分割協議書の作成方法
- 9.4. 遺産分割調停
- 9.4.1. 遺産分割調停とは
- 9.4.2. 遺産分割調停は、全員参加が必要
- 9.4.3. 遺産分割調停には弁護士が必要!
- 9.4.4. 弁護士を依頼しなかったため家がなくなったAさんのケース
- 9.4.5. 弁護士に依頼していたら、家も生活も守ることができた
- 9.5. 遺産分割審判
- 9.6. 特別受益とは?
- 9.7. 寄与分とは?
- 9.8. 不動産の名義書換の方法
- 9.9. 銀行預金の払い戻しの方法
- 10. 相続税が発生するケース
- 10.1. 相続税の節税方法は?
- 10.1.1. 生前贈与
- 10.1.2. 不動産を購入
- 10.1.3. 養子縁組
- 10.1.4. 控除を確実に利用する
- 10.2. 相続税を払えない場合の対処方法
- 11. 遺産相続で疑問や悩みがあるなら、まずは当社に相談しよう!
相続のルールと要点
スムーズに遺産相続を行うためには、事前に色々準備をしておく他に、相続の対象財産や、相続の手続きの流れを知っておく必要があります。ここでは、相続のルールと手続きの流れがわかる、遺産相続の基礎知識を解説します。
相続とは
相続とは、人の遺産を次の世代に受け継がせること
日本では、私有財産が認められていますが、所有者が亡くなったらその財産を所有する人がいなくなってしまうので、誰かがそれを受け継ぐ必要があります。所有者が死亡した財産をすべて国有化することができないことは、明らかですし、死亡した人が借金をしていることもあります。そうした場合、債権者が誰にも請求ができなくなるのも不合理です。
そこで、これらの相続財産を次の世代に受け継がせることにより、私有財産性を維持し、取引の安全をはかることができます。
相続がうまくいかないと、大きなトラブルが起こる
相続をするときには、誰がどの遺産を相続するかが必ずしも明らかでないので、それを決めるために、相続人同士で争いが発生してしまうためです。
最近、日本では高齢化社会が進んだことや、資産を持ったシニア世代が増えたことなどにより、相続への関心が高まっています。効果的に相続トラブルを避ける方法や、相続税を節税する(発生させない)方法について知りたいと考えている人も多いでしょう。この記事では、そうした疑問や希望にもお応えしていくので、是非とも最後までお読み下さい。
相続前に押さえておきたい4つのポイントとは?
相続は私たちが社会で生きていくために重要な制度ですが、一生のうちにそう何度もあることではありません。トラブルを起こさずにスムーズに手続きをするためには、どのようなことに注意したら良いのでしょうか?
以下で、相続前に押さえておきたい4つのポイントをご紹介します。
相続財産はなに?
まずは、何が相続財産になるのかが重要です。相続財産とは、相続の対象になる遺産のことです。相続財産というと、一般的には現金や預貯金、不動産などだと思われていますが、それ以外にも借金などの負債や権利なども対象となります。反対に、相続されると思われているけれども、実は相続財産にならない財産や権利もあります。
何が相続財産になり、ならないのかについて正確に理解しておかないと、適切に相続手続きを進めることができないので、まずは「相続財産」の内容を押さえておきましょう。
誰が受け継ぐの?
次に、遺産を「誰が受け継ぐのか」も非常に重要です。相続財産が決まっても、誰が相続するのかが決まらないと、財産が宙に浮いた状態になってしまいます。もともとの相続人とは異なる人に遺産を渡したいケースもあり、その場合には遺言書が必要になりますし、誰も相続しない場合に最終的に遺産がどうなるのかも問題です。
また、遺産に借金があると、自分が相続人になっていても相続したくないケースもあり、その場合の対処方法も知っておく必要があります。
分配の割合はどうするのか?
相続財産と相続人が決定したら、次は遺産の分配割合を決める必要があります。
遺産の分配割合は、基本的に民法によって定められています。民法では、各ケースに応じて、法定相続人と法定相続分が定められているので、相続が起こった場合には、その割合に応じて遺産を分配するのです。これと異なる割合で遺産を分配したい場合には、遺言書を残しておく必要があります。また、相続人同士が話し合いによって法定相続分と異なる割合で遺産を分配することも可能です。
相続税を払えるか?
遺産相続をするとき、相続税についても忘れてはいけません。特に近年相続税の基礎控除が大きく引き下げられたことにより、相続税を支払わなければならない家庭が増えています。たとえば、都市部に自宅や土地があると、不動産の評価額が高額になるために、思ってもみなかったような高額な相続税が突然課税されることもあり、こうしたとき、相続税を支払うだけの現金がないため、支払ができなくなって税務署から督促をされたり、泣く泣く土地建物を売却しなければならなくなったりすることもあります。
そのようなことを避けるためには、事前に相続税対策をしておくことが重要です。
以上、相続をするときには
- 相続財産
- 相続人(誰が相続するか)
- 分配割合
- 相続税
の4点を、最低限押さえておく必要があります。以下で、それぞれについて詳細に説明します。
相続の対象となる財産
遺産相続をするときには、まずは相続財産が重要ですから、以下で、具体的に相続財産になる財産とならない財産について、見てみましょう。
プラスの遺産
相続財産になるものとしては、プラスの資産が代表的です。これは、現金や預貯金、不動産や投資信託、株、貴金属や骨董品、ゴルフ会員権などの資産です。遺産の中でも最もわかりやすいでしょう。
相続財産の評価時期は?
プラスの資産で問題になるのは、評価方法です。現金や預貯金などの場合には評価方法が問題になることは少ないですが、不動産や株などの価格が変化するものについては、いつの時点で評価を行うかが問題になります。
相続財産の評価時は、遺産分割と相続税の場合とで異なります。遺産分割をする場合には、遺産分割時の評価となりますが、相続税の計算の場合には、相続発生時が基準となります。
不動産の評価方法も問題になる
また、不動産の場合には、そもそもどのような評価方法を使うべきかも問題となります。不動産の評価方法には、路線価と固定資産評価額、実勢価格と公示地価の4種類があるからです。これらについても、遺産分割の場面と相続税支払いの場面で、取扱が異なります。遺産分割の場面では、一般的に実勢価格を利用しますが、相続税の計算の際には相続税路線価という評価方法を使います。
このように、ひと言で「プラスの資産」とは言っても、実際に相続するときにはいろいろな問題があります。
マイナスの負債
相続財産となるのは、プラスの資産とは限りません。借金などのマイナスの負債も相続の対象になってしまいます。このことは、一般にはあまり意識されていないことがあるため、注意が必要です。
たとえば、生前に接触のなかった兄弟が亡くなった場合で、その兄弟がサラ金から借金をしていたら、ある日突然サラ金から督促が来ることもあります。死亡者に子供も親もいなければ、兄弟姉妹が相続人になってしまうためです。こうした場合、「相続放棄」という手続きをしないと、自分がサラ金に支払をしなければならないので、大変な目に遭います。
また、相続の対象になる負債は、借金だけではありません。未払の家賃や買掛金などの他の種類の負債がある場合にも、相続の対象になります。父親が事業を営んでいて多額の負債がある場合などには、相続の際に特に注意が必要です。
権利義務
相続の対象になるのは、お金や借金のような目に見えるものだけではありません。抽象的な権利義務も相続されます。たとえば、亡くなった人がアパートを借りて住んでいたら、大家との間で賃貸借契約をしていますが、その賃借人の地位は、相続人に相続されますので、賃貸借契約を解約しないかぎり、相続人は大家に家賃を支払わなければなりません。解約の際、原状回復が必要であれば、その分の費用も支払う必要がありますし、亡くなった人の荷物を片付ける必要もあります。
また、被相続人が誰かの借金を保証していた場合には、保証人の地位も相続の対象になるため、借金した本人が支払をしないときには相続人が支払をしなければならないのです。自分は保証した覚えがないのに、見も知らない他人の借金を返済しなければならない可能性もあり、大変な不利益が及びます。
相続の対象にならない財産
次に、相続の対象にならない財産を見てみましょう。一般的には相続財産になると思われがちだけれども、実は相続財産にならないものがあるので、注意が必要です。
祭祀財産
遺産の中でも、「祭祀財産」と呼ばれるものは、相続の対象になりません。祭祀財産とは、先祖をまつるための資産のことです。たとえば、墓地や墓石、仏壇や仏具、神棚などのものです。遺骨も遺産分割の対象にならないと考えられています。そこで、これらの祭祀財産については、相続人らが遺産分割の話し合いをして、誰が相続するかを決めることがありません。
祭祀財産は祭祀主宰者が承継する
それでは、こうした祭祀財産は、誰が相続するのかが問題です。これについては、「祭祀主宰者」と呼ばれる人が相続します。祭祀主宰者を承継する際し継承者は、基本的に慣習によって決定します。たとえば、その地方では長女が祭祀を承継する慣習であれば、その家の長女が祭祀主宰者となります。ただし、被相続人が遺言によって別の人を祭祀主宰者にすべく指定していたら、指定された人が優先的に祭祀を承継します。
このように、慣習も遺言による指定もない場合には、家庭裁判所が祭祀主宰者を決定します。慣習が明らかではなく、相続人同士で争いが発生した場合にも、家庭裁判所で祭祀主宰者を決定してもらう必要があります。
家庭裁判所で祭祀継承者を決めてもらう方法
家庭裁判所で祭祀主宰者を決めてもらうためには、トラブルの相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、祭祀財産承継者指定調停を申し立てる必要があります。調停では、関係者(多くは法定相続人と一致する)がお互いに、誰が祭祀を承継するかについて話合いをすすめ、合意ができたら、その人が祭祀主宰者として祭祀財産を承継します。
合意ができない場合には、調停は不成立となります。その場合、裁判所が審判によって、誰が祭祀承継者となるかを決定します。
生命保険金
生命保険の死亡保険金も、相続財産になるかどうかが問題になりやすい財産です。
死亡保険金は、基本的には相続財産になりません。死亡保険金は、死亡者から誰かに受け継がれるものではなく、受取人の固有の権利であると考えられているためです。ただ、生命保険金は、民法上の遺産分割の対象にはなりませんが、相続税課税の際には相続財産とみなされて、課税対象になるので注意が必要です。
また、遺産分割の場面でも、死亡保険金が問題になることがあります。死亡保険金の金額があまりに高額で、それをひとりの相続人が相続すると他の相続人との間で不公平が大きくなるときには、是正が行われます。具体的には、生命保険の受取が「特別受益」と評価されて、保険金受取人の遺産の取得割合が減らされることになります。
一身専属的な権利
被相続人の権利義務も相続の対象になりますが、被相続人の一身専属的な権利義務は、相続されないこととなっています。一身専属的な権利義務とは、被相続人の個人的な人間関係や信頼関係によって発生していた権利義務のことです。たとえば、被相続人が身元保証人になっていた場合、身元保証人の地位自体は相続の対象になりません。ただし、身元保証していた人が問題を起こして、すでに損害が発生していた場合、具体化した損害賠償義務については相続の対象になります。
また、年金の受給権や生活保護の受給権などの権利についても、被相続人の一身専属的な権利と理解されているため、相続されません。養育費や婚姻費用、扶養料の支払請求権や支払い義務などの身分にもとづく権利義務も相続されません。そこで、父親が誰かに養育費を支払っていても、相続した子供が引き続いて養育費を支払う必要はありませんし、反対に、死亡した子供が別れた夫から養育費をもらっていた場合でも、母親は引き続き別れた夫に養育費を請求することはできません。
会社との労働契約や婚約などについても同様です。サラリーマンの父親が死亡したときに息子が代わりに会社に行かなければならないことはありませんし、婚約していた息子が死亡していたときに父親が代わりに結婚することもありえません。
相続財産を確定する方法
どのようなものが相続財産になるのかがわかったとしても、遺産分割をするためには、具体的にどのような相続財産が存在しているのかを明らかにする必要があります。そこで、以下では相続財産を確定させるための方法をご説明します。
相続財産調査
まずは被相続人の自宅を調べる
相続財産を確定させるためには、相続財産調査をしなければなりません。相続財産調査とは、被相続人が残した遺産の内容を調べる手続きです。相続財産調査では、かなり地道な作業が必要です。具体的には、被相続人宅に残された資料を調べます。引き出しやタンス、金庫や机の中などに、預貯金通帳や証書、現金や積立金の証書などがないかを調べます。貴金属や骨董品などについても同様です。
郵便物をチェックする
郵便物を調べる方法も有効です。役所から固定資産税についての通知が来ていたり、銀行や証券会社から連絡書や残高通知書などが届いていたりすることもあります。サラ金やカード会社からの葉書があったら、借金をしていることも判明します。
不動産の名寄せ帳の開示を受ける
不動産については、市町村役場で名寄せ帳を見せてもらうことが役立ちます。名寄せ帳とは、その自治体内での不動産とその所有者についてまとめられている書類で、固定資産課税台帳とも言います。相続人であれば、被相続人に関する部分を開示してもらうことができるため、亡くなった人がその自治体内で所有していた不動産を一括で把握することが可能で、資産家の人が亡くなったときには、特に役立つ方法です。
ネット取引にも注意
また、最近では、ネット上でお金や株などのやり取りとしている人も多いので、注意が必要です。ネット証券では、郵便による連絡が一切ないことも多いため、ネットでFX取引をしていた人が死亡した事例で、家族がネット取引のことについて気づかないままに長期間放置していて、1000万円以上もの莫大な損失が発生したケースなどもあります。こうした場合、発生した損失についても相続人が責任を負わないといけません。
被相続人がパソコンやスマホを使っていた場合には、そのようなものの内容まで調査しておくべきです。特に、証券会社や銀行のページを頻繁に訪れていた形跡がある場合には、注意が必要です。
借金を相続したくない場合
相続財産には、借金や未払い金が含まれていることがあります。また、被相続人が連帯保証人になっていた場合、保証人の地位も相続人に相続されてしまいます。このような場合、相続人は、相続をしたくないことがありますが、そのための対処方法を説明します。
相続放棄とは
相続人が相続をしないためには、相続放棄か限定承認という手続きをする必要があります。
相続放棄とは、一切の遺産相続をしないことです。相続放棄をすると、その人は、はじめから相続人ではなかったことになります。このように、遺産相続をしないので、借金や保証人の地位も相続せず、相続人であっても支払をする必要がなくなります。
ただし、相続放棄をすると、借金だけではなく、プラスの資産も受けとることができなくなるので、注意が必要です。借金はあるけれども、プラスの資産もたくさんある場合には、うかつに相続放棄をすると、損になってしまうおそれがあります。
限定承認とは
次に、限定承認があります。限定承認とは、遺産の内容を調査して、プラスの資産から債権者などに必要な支払をして、あまりがあったら相続人が相続をする方法です。あまりがなければ相続しません。マイナスの借金だけしか残らない場合には、相続をせずに済みます。
限定承認をするためには相続人が全員共同して行わないといけないので、相続放棄よりもできるケースが限られて来ます。
相続放棄・限定承認の方法
相続放棄も限定承認も、家庭裁判所で「申述」という手続きをすることによって行います。具体的には、家庭裁判所に「相続放棄の申述書」や「限定承認の申述書」を提出することによってできます。
相続放棄・限定承認の期限
相続放棄も限定承認も、期限があるので注意が必要です。民法では、「自分のために相続があったことを知ってから」3ヶ月以内に行う必要があるとされています。具体的には、相続があったこと(被相続人が死亡したこと)と、何らかの相続財産があったことの2点を知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所で手続きをしなければなりません。
この期限を熟慮期間と言いますが、熟慮期間を過ぎると、相続放棄も限定承認もできなくなって、借金を相続するしかなくなるので、相続をしたくないならとにかく早めに相続放棄または限定承認をしましょう。
誰が遺産をもらうのか
遺産相続の2つ目のポイントは、「誰が遺産をもらうのか」ということです。これについては、民法上で定めがあるので、以下で確認していきましょう。
法定相続人
民法では、遺産相続が起こったときに誰が相続すべきかについて定めています。法律上相続権のある人のことを、法定相続人と言います。それでは、具体的には誰が法定相続人になるのでしょうか?以下で見てみましょう。
夫や妻はいつでも法定相続人
まず、亡くなった人に配偶者がいたら、配偶者はいつでも相続人になります。それ以外の法定相続人には、順位があります。
第1順位の相続人は子供
第1順位の法定相続人は、子供です。養子縁組をしていたら養子も相続人になりますし、別れた妻や夫との間に子どもがいたら、その子どもも法定相続人です。結婚していない女性との間に子どもがいて、認知していたら認知した子どもも相続人となります。子供が親より先に死亡していたら、孫(死亡した子供の子供)が法定相続人となります。
第2順位の相続人は親
子供や孫がいない場合には、親が第2順位の法定相続人となります。両親が生きていたら両親とも法定相続人ですし、片親しか生きていなければ、生きている親が相続します。両親ともなくなっていて、祖父母が生きていたら、祖父母が法定相続人となります。
第3順位の相続人は兄弟姉妹
被相続人に子供も親もいない場合には、第3順位の相続人は兄弟姉妹です。兄弟姉妹が被相続人より先に死亡していたら、その兄弟姉妹の子供である甥や姪が相続をします。
相続人がいない場合
被相続人に配偶者も子どもも親も兄弟姉妹もいない場合には、相続人が不存在となってしまいます。その場合には、相続財産を管理するための相続財産管理人を選任してもらい、相続財産を精算してもらう必要があります。
相続人調査とは
遺産分割をするときには、相続人が全員参加しないといけません。そこで、相続が起こったときには、どのような相続人がいるのかを調べる必要があります。このことを、相続人調査と言います。
相続人調査は手間と負担がかかる
相続人調査も、非常に地道で面倒な作業が必要になります。具体的には、死亡した人が生まれてから亡くなるまでの、全ての連続した戸籍謄本類の収集が必要です。普段生活しているときにはあまり意識しませんが、人の戸籍謄本というものは、生まれてから亡くなるまでに何度も作り直されるものなのです。
結婚したら新しい戸籍が作られますし、親が離婚したら戸籍が変わることもあります。離婚しても戸籍が変わりますし、役所における戸籍の管理方法が変わったら自分では何もしていないのに、戸籍が変わることもあります。養子縁組や認知によっても戸籍内容が変わりますし、単純に転籍した場合にも戸籍が変わります。
そこで、相続人調査をするときには、こうしたたくさんの戸籍を全部取り寄せないといけないので、かなり大変な作業になります。何度も結婚と離婚を繰り返していたり転籍していたりする人の場合、戸籍だけでものすごい量になります。しかも、戸籍謄本は、いちいち本籍地のある役場に申請をしないといけないので、非常に手間です。郵便で順番に取得していくと、時間もかなりかかってしまいます。1通450円や750円の費用、郵送の費用、定額小為替発行費用などもかかるので、費用が相当かさむケースもあります。
戸籍が連続していることがポイント
相続人調査では「連続している」ことがポイントです。同じ役場で複数の戸籍が管理されていることもあり、一部が抜け落ちてしまうこともあります。確実に日付が連続した戸籍を取得しないと、確実に相続人を調べることができませんし、各種の相続手続きでも利用することができません。
専門家に依頼すると楽になる
自分で戸籍を集めるのが難しい場合には、専門家に手続きを依頼することもできます。弁護士に相続人調査をしてもらったら、被相続人と相続人同士の関係を明確に明らかにしてくれる「相続関係説明図」も作成してくれるので、相続関係が非常にわかりやすくなります。相続人調査がしんどいな、と感じたら、是非とも弁護士に相談してみましょう。
遺言で相続人を指定できる
民法はそれぞれのケースにおける法定相続人を定めていますが、自分としては、それ以外の人に財産を渡したいな、と思うことがあります。たとえば、婚姻届を出していない内縁の妻がいる場合や、相続人になっていないかわいい孫がいる場合には、それらの人に家やお金をあげたいこともあるでしょう。こうしたときには、「遺言」をすることによって、指定する人に遺産を渡すことができます。
遺言は一般的にも広く知られているものですが、正確に言うと、人の最終の意思を明らかにするものです。遺言をするときには、必ず遺言書という書面によって行う必要があります。遺言をする場合には、誰にどのような遺産を残すかについて、遺言者の自由な意思で定めることができます。たとえば、相続権のない人に対してすべての遺産を相続させることも可能です。
また、遺言は、相続人がいないケースでも役に立ちます。いわゆる天涯孤独な人のケースです。このような人の場合、自分が亡くなったら、遺産は最終的に国のものになるだけなので、そのようなことは無駄だと考えることがあるでしょう。そこで、遺言により、お世話になった人や血縁はないけれども遺産をあげたい人、自分が関与している団体などに遺産を残すと、メリットが大きいです。
遺留分に注意
遺言をするときには、「遺留分」に注意しなければなりません。遺留分とは、法定相続人に認められる、最低限の遺産の取り分のことです。法律では、遺言によっても遺留分を侵害することができないとされているのです。
ただし、これは遺留分を侵害する遺言ができないという意味ではありません。遺留分を侵害しても、侵害された相続人が何も文句を言わなかったら、その遺言内容は有効になります。ただ、遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求という請求をすることができて、これにより遺留分を取り戻すことが可能です。そうなると、相続人と遺言によって遺産をもらった受遺者との間でトラブルになってしまいます。
たとえば、遺言者が遺言によって、内縁の妻に不動産を残したとします。ところが、子供たちがこれに反発して、内縁の妻に対し遺留分減殺請求をしました。そうなると、内縁の妻と子供たちが、遺留分減殺調停や訴訟などの法的な紛争をしないといけなくなり、大きなトラブルにつながります。自分ではよかれと思ってした遺言がトラブル原因になるのですから、全く意味がありません。そこで遺言をするときには、法定相続人の遺留分を侵害しないように、十分注意する必要があります。
どのくらい遺産をもらうか決める方法
遺産相続で重要なポイントの3つ目は、どのくらい遺産をもらうかという分配割合です。これについては、どのような割合になっていて、どうやって決めたら良いのでしょうか?以下で見てみましょう。
法定相続分
民法では、誰が相続をすべきかという法定相続分だけではなくどのくらい相続をすべきかという法定相続分についても定めています。具体的には、以下の通りです。
配偶者のみが相続人になる場合
まず、配偶者のみが相続人になる場合には、配偶者が全部相続します。
配偶者と子どもが相続人になる場合
配偶者と第1順位の相続人である子どもが相続人になる場合には、配偶者が2分の1、子供が2分の1です。子供が複数いたら、子供の取得分が子供の人数で頭割り計算されます。たとえば、子供が2人いたら、1人ずつの取得分は、2分の1×2分の1=4分の1となります。子供だけが相続する場合には、子供の頭数で遺産を分配します。このとき、今の配偶者の子どもか前妻(夫)の子供かによって取得割合に違いはありませんし、養子と実子、認知した子どもによる違いもありません。すべて平等の相続割合となります。
配偶者と親が相続人になる場合
配偶者と第2順位の親が法定相続人になる場合には、配偶者が3分の2、親が3分の1の相続分となります。両親が生きていたら、1人1人の相続分は、3分の1×2分の1=6分の1ずつとなります。親のみが生きている場合には、両親が全部相続します。親がひとりなら全部ですし、両親が生きていたら2分の1ずつとなります。
配偶者と兄弟姉妹が相続人になる場合
配偶者と第3順位の兄弟姉妹が法定相続人になる場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1となります。兄弟姉妹が複数いる場合には、兄弟姉妹の分を頭割りで分けます。たとえば、兄弟姉妹が3人いたら、兄弟姉妹1人1人の取得割合は、4分の1×3分の1=12分の1ずつとなります。兄弟姉妹のみが相続人になる場合には、兄弟姉妹の人数で頭割り計算をします。
遺産の分配を決める方法
民法によって、法定相続人の法定相続分が決められていますが、具体的に誰がどの遺産を取得するかについては、個別のケースにおいて決めなければなりません。そのために必要になるのが、遺産分割です。
遺産分割協議とは、どの相続人がどの遺産をもらうのかを決定するための手続きです。すべての相続人が参加する必要がありますが、相続権のない人は参加することが認められません。遺産分割をするときには、法定相続分に従って遺産の分配をしていくことが原則ですが、全員の合意があれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分配することもできます。たとえば、母親と子供が相続人になっているとき、本来なら母親が2分の1、子供が2分の1の相続分となりますが、遺産分割によって、母親が全部遺産を相続することもできますし、子供に3分の2を渡すことなども可能です。
このように、遺産分割は、具体的な遺産取得方法を決める手続きなので、遺産相続の場面で非常に重要で、トラブルも多く起こります。
以下では、具体的な遺産分割の手続きの進め方をご説明します。
遺産分割協議
遺産分割協議には相続人が全員参加する
遺産分割を行うときには、まずは相続人が全員集まって遺産分割協議をすることが基本です。遺産分割協議とは、遺産分割の方法を決めるための話合いのことです。特に方式は決まっていないので、電話やテレビ会議、手紙やメールなどを使ってやり取りをすることも可能です。
注意しないといけないのは、必ず相続人が全員参加しないといけないということです。1人でも漏れていたら、遺産分割は無効です。相続人に未成年者がいる場合には、家庭裁判所で特別代理人という人を選任しなければならないことがありますし、認知症の相続人がいる場合には、成年後見人を選任しなければならないことがあります。
遺産分割協議書の作成方法
すべての相続人が合意したら、その内容をまとめた書類を作成します。その書類のことを「遺産分割協議書」と言います。遺産分割協議書には、相続人全員が署名と押印をしなければなりません。このとき、法律上は、実印である必要はありませんが、実際には実印で押印することが多いです。遺産分割協議書は、不動産の名義書換のときに必要になりますが、そのとき、実印で押印したものが必要ですし、全員の印鑑登録証明書の添付も必要だからです。そこで、実印以外で遺産分割協議書を作っても、不動産登記の際に再度実印で遺産分割協議書を作り直さないといけません。また、実印で押印している方が、遺産分割協議書の信用性も高くなり、将来のトラブルも防ぎやすいです。
そこで、遺産分割協議書を作成するときには、全員が実印で押印をして、印鑑証明書も添付しておきましょう。
遺産分割調停
遺産分割調停とは
相続人が集まって遺産分割協議を行っても、意見が合わないことがあります。その場合には、話合いでは遺産分割の方法を決めることができないので、遺産分割調停をしなければなりません。遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して、遺産分割の方法を決める手続きです。
調停を利用すると、家庭裁判所の調停委員が話合いを仲介してくれます。このことにより、お互いが妥協をして話合いがまとまることも多いです。相続人が全員合意したら、調停が成立して、家庭裁判所が調停調書を作成してくれます。調停調書があると、遺産分割協議書がなくてもさまざまな相続手続きをすることができます。
遺産分割調停は、全員参加が必要
遺産分割調停にも、相続人が全員参加する必要があります。この場合、申立人か相手方のどちらかに相続人が入っていたら足ります。多くの場合、自分と意見の合う相続人と共同で遺産分割調停を申し立てて、意見の合わない相手を相手方とします。
遺産分割に関心がなくて、「どうでもいい」と思っている相続人がいる場合でも、必ず調停の当事者にしないといけないので、注意が必要です。共同で申立をしないなら、相手方として参加させましょう。相手が遺産分割調停に来たくないなら、代理人弁護士を立ててもらう方法などもあります。
遺産分割調停には弁護士が必要!
遺産分割調停をするときには、弁護士に依頼すると非常に有利になりやすいです。遺産分割は、話合いの手続きとは言っても法律的な知識が要求される部分が大きいからです。もしこのまま妥協しなかったらどのような不利益があるのかなども、当事者にはわからないため、自己判断で調停をすすめていると、思ってもみなかったような結果になって驚くこともあります。
弁護士を依頼しなかったため家がなくなったAさんのケース
たとえば、以下のようなケースがあります。
Aさんには妹がいますが、最近父が死亡しました。遺産は、父が残した自宅で、Aさんはそこに居住しています。Aさんは、自分が長男なので、家に住む権利があると思っていましたが、妹が「家の権利が半分ある」と言って、家の半額のお金の支払いを要求してきました。Aさんは、そもそもそんなお金を支払う義務がないと考えていましたし、実際にそんなお金もないので、支払を拒絶していたら、妹は、遺産分割調停を起こしてきました。
Aさんは、調停は話合いだから、妹の主張を拒絶していたら問題がないと思い「家は渡さないし、お金も払わない」と言いました。調停委員からは「今のうちに妥協した方がいい」「分割払いもできますよ」などと言われましたが、Aさんは無視しました。そうなると、調停は不成立になってしまいました。
すると、審判という手続きが開始して、裁判官が妹の権利を認め、家を強制的に売却してお金を2分の1に分け合う、という決定をしてしまいました。このことにより、家は市場価格の7割くらいの金額でしか売れず、諸経費も差し引かれてAさんの取得額は微々たるものになってしまいました。しかも家までなくなって、Aさんは今後どうやって生きていけばいいのかわからず呆然としています。
弁護士に依頼していたら、家も生活も守ることができた
この場合、Aさんは家がなくなってしまいましたが、調停段階から弁護士に相談をして、「審判になったら不利になるので妥協しておいた方が良い」と教わっていたら、そのように対処をして、家も生活も守ることができたのです。
このことからも、遺産分割調停時に、弁護士に依頼することがどんなに大切かがわかります。遺産分割調停をするなら、必ず弁護士に相談して代理人になってもらいましょう。
遺産分割審判
遺産分割調停をしても、相続人が遺産分割の方法について合意ができないことがあります。その場合、調停が不成立になって、手続きは当然に遺産分割審判に移行します。遺産分割審判とは、裁判官が遺産分割の方法を強制的に決めてしまう手続きです。話合いではないので、どのような決定内容になるかはわかりません。ただ、自分の有利内容の決定をしてもらうためには、法律的に筋の通った主張をして証拠を提出しないといけません。その意味で、遺産分割調停は訴訟と似ています。
審判によって遺産分割の方法が決定されたら、家庭裁判所から審判書という書類が送られてきます。その書類を使うと、不動産の名義書換などの手続きができます。
特別受益とは?
遺産相続の取得割合は、基本的に法定相続分に従って決めるのですが、若干の修正が行われることがあります。その方法の1つが、特別受益です。特別受益とは、相続人の中に、被相続人から生前贈与や遺贈をうけたりして利益を受けた人がいる場合のその利益のことです。そして、特別受益があると、特別受益者の遺産相続分を減らします。その方法のことを、特別受益の持ち戻計算と言います。
たとえば、姉、兄、弟の兄弟3人が相続人になっている場合を考えてみましょう。このとき、姉は結婚するときに父親から家を買ってもらいました。兄は、事業を始めるときに父親から開業資金をもらっていました。弟は何ももらっていないとします。
この場合、本来の法定相続分は、兄弟それぞれが3分の1ずつですが、そうなると、弟にとってあまりに不公平です。そこで、姉がもらった家の分や、兄がもらった開業資金の分を、姉や兄の遺産取得分から減らすのです。この場合、姉や兄が、不動産やお金をもらったことが「特別受益」です。そして、姉や兄のように特別受益をもらった人のことを「特別受益者」と言います。
そして、不動産や兄のもらったお金の分を相続財産に足して評価し、姉や兄の遺産取得分を減らす方法が、特別受益の持ち戻計算です。これにより、元々の法定相続分が修正されて、本当に公平な方法で遺産分割をすることが可能になります。たとえば、遺産の金額が2000万円の場合、本来なら3人の兄弟の取得分はそれぞれ666万円ですが、兄や姉が譲り受けた不動産や開業資金の金額により、弟が1200万円をもらい、姉が300万円、兄が500万円などとすることができます。(厳密には、正式な計算方法があります)
寄与分とは?
遺産の分配割合を修正する方法のもう1つが、寄与分です。寄与分とは、相続人の中に、遺産の増加や維持に特別に貢献した人がいる場合に、その相続人の遺産取得割合を増やすことです。たとえば、相続人が長年無給で父親の事業を手伝い続けてきた場合や、相続人が長年献身的に母親の介護を続けてきたケースなどにおいて、寄与分が認められやすいです。寄与分が認められると、寄与分を評価して、寄与者の相続分を増やします。
ここでも、例を見てみましょう。
兄弟3人が相続人になっている場合、末の妹が母親と同居して献身的に介護をしてきたとします。母親は持病があり、末の妹はもともと母と同居して、日常的なケアをしていました。母親死亡前の5年間は要介護度が4級となり、妹は介護にあたっていたため、母親が亡くなったときには50歳になってしまっていました。妹は結婚もできませんでしたし、仕事のキャリアも諦めました。兄や姉は自由に生活していて、結婚もして家も持っています。
このような場合、兄弟3人が3分の1ずつとなるのは不公平です。そこで、妹は、寄与分を主張して、遺産を多くもらうことができます。たとえば、遺産の評価額が1000万円の場合、妹の寄与分の度合いにもよりますが、妹が500万円、兄と姉をそれぞれ250万円ずつにしてもらうことなどができます。(厳密には、正式な計算方法があります)
不動産の名義書換の方法
遺産分割協議が終わったら、それぞれの遺産について、具体的な相続手続きをしないといけません。ここでよく問題になるのが、不動産の名義書換です。名義書換とは、不動産の所有名義を、亡くなった人から相続人へと変更することです。不動産の所有者が死亡しても、登記名義は被相続人のままなので、名義を換えないと誰が所有者なのかがわからない状態になってしまいます。そこで、自分が不動産を相続することになったら、必ず名義書換が必要です。
名義書換をするためには、不動産のある場所を管轄する法務局に行って、相続登記の申請をします。このとき、登記申請書という書類を作成して提出しなければなりません。また、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本、被相続人の住民票の除票(戸籍附票)、遺産分割協議書または遺言書、印鑑証明書、相続人の戸籍謄本、固定資産評価証明書などの書類が必要です。さらに、登録免許税という費用が発生します。金額は、不動産の評価額(固定資産税評価額)の1000分の4の価格となり、収入印紙を購入して、登記申請書に貼付することによって支払をします。
このようにして登記申請をしたら、無事に不動産の登記名義が自分に変わり、法務局からは「登記識別情報通知」という書類をもらうことができます。登記識別情報は、昔の権利証と同じものであり、不動産の所有者であることを証明するための重要な書類なので、なくさないように大切に保管しましょう。
銀行預金の払い戻しの方法
遺産相続では、銀行預金の払い戻しをすることも多いです。この場合には、対象の銀行の窓口に行き、解約払い戻しの請求書を書いて提出する必要があります。このとき、必ず遺産分割協議書か遺言書が必要です。戸籍謄本や相続人の身分証明書なども必要になることが普通です。具体的には金融機関によって多少の取扱の違いがあるので、事前に何が必要か聞いて、用意していくと良いでしょう。
株の名義書換をするときにも、同じような書類が必要です。上場会社なら証券代行会社や証券会社に連絡をして、指示通りに手続きを行います。上場していない会社なら、株式を発行している会社に直接連絡を入れて、名義書換の手続きをする必要があります。
相続税が発生するケース
遺産相続で4つ目のポイントとなるのが、相続税です。遺産の評価額が大きい場合には、相続税の支払をしなければなりません。相続税には「基礎控除」があるため、基礎控除の範囲内に収まっていたら、相続税は発生しません。しかし、最近基礎控除の金額が大きく引き下げられたため、多くの家庭で相続税の支払いが必要になります。
基礎控除は、以下のとおりです。
3000万円+法定相続人数×600万円
たとえば、法定相続人が3人なら4800万円、4人なら5400万円が基礎控除の金額です。
都市部に高額な評価額の土地建物を所有している場合、昔からの資産家の家庭、普通の家庭でもがんばってお金を貯めたケースなど、基礎控除を超えるケースは珍しくないので、生きていいる間に、相続税の節税方法を考えておくことが大切です。
相続税の節税方法は?
それでは、以下では、具体的にどのような相続税の節税方法があるのか、有効なものをいくつかご紹介します。
生前贈与
相続税を節税するためには、生前贈与が非常に役に立ちます。節税に関心がある人なら、一度は聞いたことがあるでしょう。生前贈与とは、生きているうちに、相続予定の人に財産を贈与することです。贈与した分は相続財産にならないので、その分遺産評価額を減らして相続税を節税することができます。
ただ、贈与をすると、贈与税がかかることが問題です。そこで、生前贈与を成功させるためには、なるべく贈与税がかからない方法で生前贈与をしなければなりません。
生前贈与で相続税を節税する方法にはいくつもの方法がありますが、代表的なものは、贈与税の基礎控除を利用する方法です。贈与税は、毎年110万円までの贈与分には税金がかからないという基礎控除があります。期間に制限はありません。また、贈与の対象者が複数でもかまいません。そこで、毎年110万円ずつ贈与を繰り返していけば、死亡するまでに多くの財産を贈与することができます。
たとえば、3人の孫に110万円ずつ、10年間贈与を続けたら、亡くなるまでに3300万円分の贈与を無税で行うことも可能です。
このような方法を暦年贈与と言いますが、暦年贈与の方法の場合、贈与する財産にも限定がありません。現金、預貯金、不動産、貴金属など何でも対象にできるので、非常に役立ちます。
不動産を購入
相続税を節税する工夫としては、不動産を購入する方法もあります。不動産は、現金や預貯金などよりも相続税の評価額が低いためです。地域や対象の不動産にもよりますが、だいたい時価の8割程度の評価となります。そこで、現金や預貯金がある場合、不動産を購入したら、遺産の評価額を8割程度に下げることができます。
不動産を賃貸に出すと、借地権割合や借家権割合を引いてもらえるので、評価額をさらに2割~4割など下げてもらうことができます。小規模の宅地の場合には、小規模宅地の特例という措置があり、最大80%の評価減をしてもらえます。
このように、不動産を所有していると、相続税対策には非常に有効です。ただし、不動産を所有していると、流動性がなくなることが問題です。相続税は現金で支払わないといけないので、すべての財産を不動産にしてしまったら、遺産はたくさんあるのに相続税が支払えないという状態になってしまうおそれもあります。節税のために不動産を購入するときには、手元に相続税支払いができる程度の現金を残しておくようにしましょう。
養子縁組
相続税節税のためには、基礎控除を増やす方法もあります。相続税の基礎控除は、相続人が増えれば増えるほど多くなる仕組みなので、基礎控除を増やすには、相続人を増やす方法が効果的です。具体的には、養子縁組をして子供を増やします。
たとえば、孫と養子縁組をすると、孫の分相続人が増えるので、基礎控除が増えます。父親が被相続人のケースで、相続人としては子供2人、さらに孫が2人いるケースを考えてみましょう。この場合、本来の相続人は子供2人だけなので、基礎控除は4200万円です。ここで孫2人と養子縁組をすると、基礎控除の金額が5400万円になるので、その分相続税がかかりにくくなります。
控除を確実に利用する
相続税を節税するためには、控除の制度を確実に利用することも重要です。相続税には、いろいろな控除の制度があります。たとえば配偶者控除を利用すると、配偶者の法定相続分か1億6000万円の少ない方の金額までは相続税がかからなくなりますし、小規模宅地の特例を利用すると、宅地の評価額を大きく下げてもらうことができます。
このような控除や特例を受けるためには、相続税の申告が必要です。また、税務署は「控除があるよ」「特例があるよ」と言ってくれないため、控除の制度を利用できることに気づかないまま高額な相続税の支払をしても、誰も指摘してくれません。相続税の控除を利用したければ、自分で知識を持って適用することが必要です。
そのためには、確実な知識を持った専門家に相談することが重要です。
相続税を払えない場合の対処方法
最後に、相続税を支払えない場合の対処方法を確認しておきましょう。
相続税を支払えない場合、まずは延納をする方法があります。これは、相続税の分割払いです。ただ、延納する場合には利子税が加算されるので、税金支払額は本来より高額になります。
延納でも支払いが出来ないなら、物納の方法があります。これは、不動産などの物で相続税を支払う方法です。しかし、この場合、不動産は相続税評価額で評価されるので、市場価格より安くなってしまいます。相続税評価額は市場価格の8割程度にしかならないからです。
そこで、相続税を支払えないなら、自分で不動産を市場価格で売却して、その売却金で相続税を支払うことをおすすめします。
遺産相続で疑問や悩みがあるなら、まずは当社に相談しよう!
以上のように、遺産相続の場面では、いろいろな問題に対処しなければなりません。まずは、どのような遺産があって、誰が相続するのか、どのような割合で相続するのかを順番に決めていく必要がありますが、相続人間で意見が合わず、トラブルになることも非常に多いです。
遺産分割トラブルが起こってしまったら、被相続人の死亡後2年3年が経っても問題が解決されないことも多いですし、もともと仲の良かった親族同士が心底憎み合うことにもなってしまいます。遺言を残すときにも、きちんと内容や方法に配慮しておかないと、かえってトラブルの種になってしまうことがあり、注意が必要です。
特に不動産を伴う遺産相続をスムーズにすすめるためには、専門家に相談してその力を借りることが大切です。当社は遺産問題に強い弁護士、税理士、司法書士等の専門家と提携していますので、ワンストップで法律問題から相続税問題から認知症問題まですべて解決できて、メリットが大きいのです。
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